Lesson1 “Lost in Translation”

英語を勉強していると、ついつい英語を日本語に訳したくなることがあります。

カナダの翻訳学教授が警鐘を鳴らしています。

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気がつくと、英語で何か言いたくなってきます。

でも、言葉が浮かびません。

英語で「また明日」と言いたいのに、どういえばいいかわかりません。

完璧に分かってもらいたい。

どうすればいいのでしょう?

バイリンガルの友人に、「また明日」って英語でなんて言うの?と聞いてみるのもいいかもしれません。

彼女は 「See you tomorrow」と答えてくれるでしょう。

これで問題は解決です。

この「英語でどういうの?」はとても便利な表現なので、言葉に詰まった時はいつも使いたいですね。

しかし、この質問の背後にある仮定は間違っている可能性があります。

日本語の表現は、必ずしも英語で正確に対応する表現を持っているとは限りません。

そして、英語でも同じことが言えます。

英語の表現が日本語で正確に対応する表現があるとは限りません。

このように、翻訳がうまくいかないこともあるのです。

translation (名) 翻訳
tempt (動)〈人を〉(悪事・快楽に)誘惑する,そそのかす
professor (名)教授
warning (名) 警告,注意; 戒め,訓戒
completely (副)完全に,完璧(かんぺき)に; まったく,徹底的に
bilingual (形)二か国語を(自由に)話す; 二か国語併用の
expression (名) 表現(すること)
loss (名)喪失,紛失,遺失
assumption (名)(証拠もなく)事実だと考えること,決めてかかること; 仮定,憶説
corresponding (形)一致する,対応する

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さて、個人的な体験談をお話します。

京都で学生をしていた頃、よくお寺や神社を訪れました。

そのとき、日本庭園の魅力は何だろうと考えていました。

そういえば、「日本庭園の本質は “わびさび “だ」と言われたことを思い出しました。

しかし、その意味がわからず、辞書を引きました。

侘び寂びとは、”上品な素朴さ “と定義されていました。

そして、さらに詳しい説明が続き、「侘び・寂びは、日本の伝統芸術における最高の美意識である。それらは「静かな悲しみ」と「簡素化」を意味します。」

私は、深い雲の中に迷い込んだような気分になりました。

コンセプトが複雑すぎて、私には理解できなかったのです。

しかし、数年後、お寺の縁側に座って庭を眺めていると、ようやく侘び寂びを感じられるようになった気がしたのです。

このエピソードは、ある概念をある言語から別の言語に翻訳することは、不可能ではないにしても、非常に困難であることが多いということを示しています。

抽象的な概念だけでなく、日本語でよく使われる表現もそうですね。

もったいない、仕方がない、お疲れ様、いただきます、いつもお世話になってます、はどうでしょう?

英語でも同じような表現があるか、あるいはバイリンガルの友達に聞いてみてください。

attractive (形)人を引きつける,魅力的な
essence (名)〔ものの〕本質,真髄(しんずい), 根本的要素
consult (動)〈参考書・辞書などを〉調べる
elegant (形)上品な,優雅な,しとやかな
simplicity (名)簡単,平易; 単一,単純
detailed (形)詳細な
explanation (名)説明; 解釈; 釈明,弁解
aesthetic (形)(特に,芸術の)美の; 審美的な
concept (名)構想,発想,コンセプト
complex (形)複雑な,入り組んだ
veranda (名)ベランダ
impossible (形)不可能な
abstract (形)抽象的な
equivalent (形)(価値・数量など)同等の,同価値の,同量の; 同意義の

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さて、英語と日本語だけでなく、世界の他の言語も見てみましょう。

ある言語学者によると、世界には7,000以上の言語があるそうで、これから紹介するのは、英語や日本語に簡単に訳せない言葉のほんの一部です。

スライド1にあるように、スウェーデン語は興味深い例です。

(resfeber)という言葉は、「旅が始まる前の旅人の落ち着かない鼓動、緊張と興奮の感情」という意味です

次に、オランダ語の例です。

スライド2を見てください。

(gezellig)という単語は、「居心地の良い、愛する人と一緒にいるときに感じるポジティブな暖かい気持ち」という意味です。

このような気持ちを一語で表現できるのはすごいことです!

スライド3は、フィンランド語の例です。

(poronkusema)は、「トナカイが休憩なしで、疲れず移動できる距離」という意味です。

スライド4は、アラビア語の例です。

(gurfa)は、「片手で持てる水の量 」という意味です。

このように、言語によって世界の概念が異なることに魅力を感じるのではないでしょうか。

簡単な言葉で表現することに限界はないようです。

linguist (名)諸外国語に通じた人,語学者
sample (名)実例,(全体または種類を代表する)見本,標本,サンプル
Swedish (形)スウェーデン(人)の; スウェーデン風の
slide (名)(スライド映写用の)スライド
restless (形)落ち着かない,そわそわした,せかせかした
beat (動)〈心臓が〉鼓動する
Dutch (形)オランダ(人,語)の
cozy (形)〈部屋など〉(暖かくて)居心地のよい; こぢんまりした
amazing (形)驚くべき,びっくりするような; すばらしい
Finnish (形)フィンランド(人,語)の
distance (名) 距離,道のり; 間隔
reindeer (名) トナカイ
comfortably (副)安楽に,快適に,気持ちよく
Arabic (形)アラビア語[文字]の,アラブ(人)の
amount (名)総計,総額
conceptualize (動)〈…を〉概念化する

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最後に、私が面白いと思っている日本語をいくつか紹介しましょう。

明るい夏の日、公園を散歩しているとします。

新鮮な空気を吸いながら、木々を見上げ、葉の間から差し込む陽光を見る。

このような日差しをどのように表現するのでしょうか?

木漏れ日

私はこれを魅力的だと思います。

本をたくさん買います。

みんな、「その本、全部読んだの?」と聞いてきます。

もちろん、そんなことはありません!

私はよく本を読みっぱなしにします。

読まないで積んでおくんです。

日本語には、このような「読書」を表す言葉として「積読」があります!

私はそれが大好きです。

日本語を母語とする皆さんは、この言葉に違和感を覚えるかもしれませんね。

しかし、日本語を母国語としない人たちは、日本独特の言葉だと感じることが多いようです。

英語学習は、言葉やルールだけではありません。

英語を学ぶことで、世界をさまざまな方法で見ることができるようになるのです。

最後に、ちょっとしたアドバイスをさせてください。

読んでいる英文が理解できているかどうかを確認するために翻訳をすることがありますが、翻訳することで失われるものがあるかもしれないことを忘れないでください。

conclude (動)〈…を〉終わりにする; 完結する
stroll (動)ぶらつく,散歩する
breathe (動)〈空気などを〉吐き出す; 〈香りなどを〉発散する
filter (動)〈液体などが〉しみ出る; 〈光などが〉漏れる
non-native (名) 土地[本国]の生まれでない(人), 外国人(の)
allow (動)〈…を〉許す; 〈…の〉入るのを許可する
lastly (副)(列挙して)最後に,終わりに