Lesson9 “Space Elevator”

Part1

もし自分が宇宙飛行士になったら、宇宙へ行ける!

多くの人が宇宙への旅を夢見ていますが、誰もが宇宙飛行士になれるわけではありません。

多くの優秀な人が宇宙飛行士になることを目指しますが、選ばれるのはほんの一握りの人たちです。

選ばれても、厳しい訓練に合格しなければなりません。

結局、この夢を実現できるのは、ごく一部の人たちだけです。

しかし、簡単に諦めてはいけません。

今、宇宙への旅を簡単に実現できるかもしれない有望な科学技術があります。

それは、宇宙エレベーターと呼ばれるものです。

日本宇宙エレベーター協会(JSEA)の大野修一会長によると、海外旅行のように誰でも宇宙へ行けるようになるそうです。

まるでSFの世界のような話です。

しかし、今世紀半ばには現実のものとなる可能性があるといいます。

distinguished(形)顕著な,名高い; 抜群の,すぐれた
succeed(動)〈事が〉成功する; 〈計画などが〉うまくいく
promising(形) 将来有望な,末頼もしい
scientific(形)科学の; 自然科学(上)の; 理科の
elevator(名)エレベーター,昇降機
association(名)連合(すること), 合同,共同,提携; 関連
fiction(名)フィクション,創作; (特に)小説

Part2

宇宙エレベーターはどのように作られるのでしょうか?

図1のAをご覧ください。

まず、地球の赤道から約36,000kmの地点に静止衛星を打ち上げます。

この地点は、地球の重力と遠心力が釣り合っているところです。

次に、図1のBに示すように、下は衛星から地表まで、上は宇宙までケーブルを張ってバランスをとります。

このケーブルにエレベーターを取り付けると、図1のCのように、エレベーターは上下に昇降できるようになります。

宇宙エレベーターで宇宙へ行くには、どれくらいの時間がかかるのでしょうか?

エレベーターは、電気を使って時速200〜300kmで走ることが想定されています。

そのため、エレベーターは1〜2時間で地球上空約400kmの国際宇宙ステーション(ISS)の高さに到達することになります。

また、上空約3万6,000kmにある静止衛星に到達するためには、約1週間かかるといわれています。

stationary(形)動かない,静止した,止まっている
satellite(名)衛星
launch(動)発射する,発進させる,打ち上げる
equator(名)赤道
gravity(名)地球引力,重力; 引力
centrifugal(形)遠心性[力]の
force(名)(物理的な)力,強さ
illustrate(動)(実例・比較などで)〈…を〉説明する,例証する
cable(名)ケーブル線
stretch(動)〈…の状態に〉引っぱる
downward(形)下方への,下向きの; 下へ行く
surface(名)表面,外面
upward(形)上へ向かう,上向きの,上昇の
attach(動)取りつける,くっつける,張りつける
expect(動)予期する
therefore(副)それゆえに,従って,それ[これ]によって

Part3

宇宙エレベーターには、非常に長いケーブルが必要です。

その長さは約10万キロメートル。

これは地球の直径の約8倍の長さです!

これだけ長いケーブルは、地球の重力や遠心力に引っ張られて切れてしまうかもしれません。

そのため、ケーブルは鉄の約100倍以上の強度が必要です。

1990年代まで、どのような素材が強度を持つのか、誰も知りませんでした。

これが、宇宙エレベーターの開発における最大の問題でした。

1991年、日本の科学者である飯島澄夫博士が、宇宙エレベーターのケーブルの材料になりそうなものを発見しました。

それは、「カーボンナノチューブ」と呼ばれるものです。

この素材がなかったら、宇宙エレベーターはSFの世界にしか存在しなかったでしょう。

カーボンナノチューブは炭素でできており、地球上で最も軽く、最も強い物質です。

その細さは 人間の髪の毛の約5万分の1の細さで、鉄の約20倍の強度があります。

現在、研究者たちは長くて丈夫なカーボンナノチューブケーブルの製造に励んでいます。

extremely(副)極端に,きわめて
steel(名)鋼(はがね), 鋼鉄
material(名)原料,材料
development(名)発達,発育; 進展,発展
carbon(名)炭素
nanotube(名) 筒状または環状形のフラーレン分子
remain(動)残る,残存する,存続する,生き残る
researcher(名)研究者[員],調査員
tough(形)〈人・動物など〉頑丈な,タフな

Part4

現在のロケットは、膨大な量の化石燃料を必要とします。

しかし、宇宙エレベーターは、省エネで環境にやさしいのです。

宇宙エレベーターは、上昇するときに大量の電気を使いますが、下降するときに電気を作ることができます。

その電気をバッテリーに貯めて、再び上昇するときに使うことができます。

一回の旅にかかる費用は、ロケットの100分の1くらいになるかもしれません。

また、ロケットと違って二酸化炭素も出ません。

宇宙エレベーターには、さらに大きな可能性があります。

火星など他の惑星にも宇宙エレベータを作ることができるかもしれません。

それを使えば、地球とほかの惑星の間で物をやり取りすることも可能になるかもしれません。

図2を見てください。

ハンマー投げのように、惑星の自転を利用して、燃料を使わずに宇宙へ物を送ることができるのです。

宇宙エレベーターが実現する日も近いかもしれません。

将来は、お年寄りや子どもでも、特別な訓練なしに宇宙へ行けるようになるかもしれません。

rocket(名)ロケット
huge(形)(形・大きさなど)巨大な; 莫大な
fossil(形)化石の,化石になった
fuel(名)燃料,薪炭
eco-friendly(形)生態系に優しい
battery(名)電池,バッテリー
unlike(形)同じでない,違った,似てない
dioxide(名)二酸化物
forth(副)前へ,見える所へ; (家などから離れて)外へ
hammer(名)金づち,ハンマー,鉄槌(てつつい)
rotation(名) (天体の)自転
someday(副)いつか,他日
elderly(形)〈人が〉かなり年配の,初老の