CHAPTER4 “Orihime – A Vehicle of Your Heart”

1

前ページの白い物体は何でしょうか?

もちろん、ロボットです。

そのロボットは私たちと話すことができます。

では、下の写真を見てください。

このロボットは “オリヒメ”といいます。

ピンと来ましたか?

そうです、日本の夏祭りの七夕にちなんでいるのです。

オリヒメという名前はその物語に由来しています。

このロボットの生みの親である吉藤健太朗は、小学生の頃、長い間学校に通うことができませんでした。

帰属意識もなく、人間関係を築くことも維持することもできなかった彼は、自分の気持ちを分かち合える人がいないことに寂しさを感じていました。

この孤独な体験が、ジェンダーフリーのロボットで、困難な状況にある人々が他者との絆を築くことを可能にするロボット「オリヒメ」の開発に吉藤を駆り立てました。

vehicle (名)(陸上の)乗り物,輸送機関,車両
robot (名)ロボット,人造人間
communicator (名)コミュニケーター; 通信機
suffer (動)経験する,こうむる,受ける
loneliness (名)孤独; 寂しさ
establish (動)設立する,創立する
bond (名)縛る[結ぶ,つなぐ]もの 《ひも・なわ・帯など》
previous (形)先の,前の,以前の
associate (動)(心理的に)関係づける,関連づけて考える,連想する
creator (名)創造者,創作者,創設者
unable (形)〈…することが〉できないで
attend (動)〈会などに〉出席する; 〈儀式に〉参列する
neither (形)どちらの…も…でない
belonging (名)親密な関係
nor (接)…もまた…ない
maintain (動)〈…を〉持続する,維持する
enable (動)〈…することを〉可能にさせる; 〈人に〉〈…することが〉できるようにする

2

例えば、ペットが死んだとか、新しい町に引っ越したとか、夢が打ち砕かれたとか、人々が孤独をを感じる理由は異なります。

孤独を克服するには、絆や仲間意識が必要なことが多いです。

しかし、身体的・心理的な理由で人と会うことができず、孤独を感じる場合もあります。

大病を患い、声も出せずに入院生活を余儀なくされている同年代の少年を思い浮かべてください。

彼もあなたと同じように、友達とサッカーをしたい、学校で勉強したい、喜びや悲しみを表現したいと思っています。

彼は一日の大半を一人で過ごしていますが、彼には、自分のような人々が、自分は役に立っている、なくてはならない存在だと感じられるようにすることで、より幸せになれるようなビジネスを始めたい、という夢があります。

彼の病院は学校から3キロしか離れていません。

彼はその学校に行きたくても行けません。

彼の孤独を想像してみてほしい。

図1のオリヒメをもう一度見てみましょう。

オリヒメは教室にいます。

実は、前述の少年が病院からオリヒメを操作しているのです。

少年は教室にはいませんが、そこに属しています。

ロボットは少年の一部であり、少年そのものなのです。

クラスメイトと話し、笑い、悲しみを経験します。

クラスの一員なのです。

shatter (動)損なう,だめになる
overcome (動)〈敵・悪癖・困難などに〉打ち勝つ,〈…を〉負かす; 〈…を〉征服する
physical (形)身体の,肉体の
psychological (形)心理(的)な,精神の
illness (名)病気
sadness (名)悲しみ,悲哀
indispensable (形)絶対必要な
mention (動)簡単に述べる,〈…を〉話に出す,〈…に〉言及する

3

織姫が笑っているのか、悲しんでいるのか、気になるかもしれません。

その顔を見てください。

目に色はなく、淡々としているが、それでも顔を通して感情を感じることができます。

「オリヒメは能面のようです。

能面は表情を見せませんが、観客はそれを感じます。

同じように、オリヒメはロボットを使う人の延長線上にあるので、人はオリヒメの顔を見ることで感情を感じることができるのです。」と吉藤は言います。

オンライン・コミュニケーション・システムのおかげで、私たちはいつでもどこでも人と話すことができます。

しかし、吉藤は「物理的な場所の共有」が現代のテクノロジーには欠けていると指摘しています。

場所を共有すれば、常に話している必要はありません。

黙って物事を考えることができます。

話さずに一緒に何かをすることもできます。

最も重要なのは、一緒にいるという感覚が共有されることです。

オリヒメは単なる装置ではありません。

あなたの心を好きな場所に運び、他の人と場所を共有できる「車椅子」なのです。

blank (形)白紙の,空白の
emotion (名) (心身の動揺を伴うような)強い感情,感激,感動
mask (名)(変装用の)仮面,覆面,面
expression (名)表情,顔つき
audience (名)聴衆; 観衆,観客; 読者; (ラジオ・テレビの)聴取者,視聴者
perceive (動)〈…を〉知覚する,認める; 〈…に〉気づく
likewise (副)同様に,同じように
extension (名) 広げる[伸ばす]こと,伸長; 拡張; 延長
online (形) オンライン(式)の[で]
anytime (副) いつでも,どんな時でも; 常に
missing (形)ある[いる]べき所にない[いない], 見つからない,紛失している
silent (形)黙っている,無口な
importantly (副)重大に,大事そうに; もったいぶって
transport (動)〔…へ〕輸送する,運送する

4

吉藤の人生で最も重要な人物の一人が番田雄太です。

番田は4歳の時に交通事故で大怪我を負い、それ以来入院生活を送っていました。

吉藤のプロジェクトに関するニュースを目にした時、番田はソーシャルメディアを通じて彼に連絡を取りました。

吉藤は盛岡にいる番田を訪ねることにしました。

その日、ふたりはすぐに意気投合しました。

番田は吉藤の親友となり、オリヒメの共同開発者となりました。

番田は、オリヒメをより機能的にする方法について、彼に多くの提案をしました。

オリヒメの品質向上プロジェクトは順調に進んでいました。

ある日、吉藤のもとに番田が亡くなったという悲しい知らせが届きました。

番田は大切な友人であり、貴重なインスピレーションの源だったので、これは吉藤にとって深刻な打撃でした。

しかし、吉藤はプロジェクトを止めることはしませんでした。

番田の言葉が彼の胸に何度も語り続けました。

吉藤は、孤独な人々がより幸せになるにはどうしたらいいかを考え続けてきました。

困難な状況に直面するたびに 吉藤は番田の言葉を思い出します。

「体が動かなくても、心は自由だ。心が自由であれば、何をしたっていいし、どこへだって行ける。」

project (名)計画,企画
click (動)意気投合する,うまが合う
co-developer (名)共同開発者
suggestion (名)提案(すること); 提言,提議
quality (名)質,資質,品質
improvement (名)改良,改善,進歩,上達
severe (形)〈人・顔つき・規則など〉厳しい,厳格な; 厳正な,厳密な
valuable (形)高価な; 貴重な,大切な
face (動)〈事実などに〉直面する,直視する
recall (動)〈人が〉〈…を〉(意識的に)思い出す
whatever (代)(…する)もの[こと]は何でも,(…する)もの[こと]は皆